コラム

ベテラン審査員から視たISO14001の改善 - 目的・目標、実施計画について

これまでに手がけた多くの審査現場で経験した事例から考えたこと。

多くの企業では、改善が必要な環境上の課題を環境目的・目標に設定し、具体的な実施手段等を実施計画にまとめ、その達成状況を管理しながら、改善の効果をあげている。しかし、一部の企業では、次のような課題も認められる。

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ベテラン審査員から視たISO14001の改善 - 環境側面

1.環境側面の特定について

  1. 企業の意思によって適用範囲内の直接管理できる環境側面は、環境工程図等を用いて、材料(原材料、部品等)、エネルギー等の入力と排ガス、排水、廃棄物等の出力を抽出しており、ほとんど全ての企業とも良くできている。
  2. 企業の意思によって直接管理できないが、何らかの影響を及ぼすことができる(影響力を行使できる)環境側面については、まだ十分でない企業が認められる。

    影響を及ぼすことができる環境側面の特定について、製造業を例に考えてみよう。

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ベテラン審査員から視たISO14001の改善 - 経営に役立てるために

共通して感じることは、トップマネジメントがISO14001の導入・運用に関してその目的を明確に持ち、その意思が環境方針等を通じて組織の全員に周知されている場合には、環境マネジメントシステム(EMS)が経営管理のツールとして機能し、うまくPDCAが回り、システム自体及びパフォーマンスの改善が継続的に図られ効果をあげているケースが多い。

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ベテラン審査員から視たISO9001の改善 - ISOの運用と審査

Q.企業は審査に何を期待しているのでしょうか

企業からの審査後のアンケートには、以前は「適合性のみの審査を希望する」とのコメントが少なからず視られました。ISO9001の規格が、2000年版、2008年版と改訂を重ねるにつれ”顧客満足の向上のために”そして”望まれる成果を得るために”とISO9001が目指すところは、規格が企業様の発展に大いに貢献することを意図するようになりました。従って審査に対して企業が期待するところは、公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)アンケート結果によると

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ベテラン審査員から視たISO9001の改善 - 内部監査-2

Q.監査目的に対し監査結果をどのように評価するのですか

A.成熟した品質マネジメントシステムが運用されている企業様の監査事務局及び管理責任者は、“適合性監査”と”有効性監査”のバランスを見ることも重要です。限られた監査時間で目的を果たす必要があります。いずれの監査においても重要なことは、監査結果を記録することです。

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ISO50001(EnMS:エネルギーマネジメントシステム)の概要

1. はじめに

ISO50001が2011年6月15日に発行されました。ISO50001はエネルギー使用の効率を図り、結果としてエネルギーの使用量を削減するためのマネジメントシステムです。
現在、原子力発電の事故、見直しによる夏期の電力需給の逼迫、石油エネルギー価格の高騰、省エネ法・CO2排出規制への対応、など企業のエネルギー管理への要望、規制がますます大きくなってきています。

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ベテラン審査員から視たISO9001の改善 - 品質方針と品質目標の整合

Q.品質方針は、顧客満足や継続的改善といった文言を使う必要が必ずありますか

A.ISO9001認証取得後、相当年数を経過した企業様でも品質方針は、ほとんど変更されていないといっても過言ではありません。企業様の理念は、これも変わることは少なく、これに沿って品質方針を設定しておれば変更されることはほとんどないわけです。認証取得当時の状況から規格5.3項の要求内容を理解すれば自ずから”顧客満足”や”継続的改善”という文言を織込むことになったと理解されます。

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ベテラン審査員から視たISO9001の改善 - プロセスの強化

Q.プロセス、あるいはプロセス管理がまだしっかりと身についていません

A.現状のISO9001認証取得企業の品質マニュアルには、QMS(品質マネジメントシステム)に必要なでプロセスを主要と支援に分けて設定し、その設定プロセス間の相互関係を関連図として表記しています。しかし設定されたプロセスは、システムとしての運用管理は十分とはいえません。すなわちプロセスアプローチの活動としては十分とはいえない状況にあります。プロセスは、品質方針と品質目標を達成する活動の場であることは言うまでもありませんが、QMSを運用管理する基本単位であり、この基本単位である各プロセスの足腰がしっかりしていなければ、品質目標の達成もおぼつか無い訳です。この足腰をしっかりとさせておくことがプロセスの運用管理といえます。


Q.足腰のしっかりしたプロセスとはどのようなことですか

A.足腰のしっかりしたプロセスとは、計画したことを達成する能力を維持しているということです。年度の売上・利益計画は、各プロセスに計画として落とし込まれ、予算化されてゆきます。このプロセスの計画が計画通りに達成できなければ、たちまち経営計画すなわち売上・利益計画に影響する結果となってしまいます。日常のプロセス活動の問題点が見過ごされていれば、それは計画の未達に繋がりかねません。


Q.プロセスの運用管理を効果的にするために規格4.1項の必要な判断基準と方法とは

A.この規格要求のシステムが弱いためプロセスの効果的運用管理が出来ていないのが実態です。そこでプロセスが順調に能力を維持し、計画は順調に遂行されているかを時々評価してみる必要があります。その評価のためには、年初にそのプロセスの能力を端的に表わすいくつかのチェックポイント、すなわち管理項目をどのような方法でどのような頻度でチェックするか、すなわち「監視・測定」するかを計画しておかなければならなりません。これが8.2.3項の要求事項になります。そして最も重要なことは、その評価、すなわち能力が維持されているかどうかを判断する基準が必要で、これがプロセスのPDCAを廻すキーとなるわけで、この判断基準が明確に設定されていない場合が多く視られます。


Q.判断基準とはどのようなものですか

A.例えば、製造プロセスの工程不良率の前年実績が、3.5%であったとします。この不良率3.5%が製造プロセスの現状能力というわけです。従って、この場合、管理項目が工程不良率、判断基準が3.5%という「管理指標」が設定されたことになり、同時に経営計画の製品原価設定に落とし込まれます。計画された頻度でこの管理指標を監視・測定していくことになり、3.5%を上回る不良率となれば、製造プロセスが本来の能力を発揮出来ていない、すなわち製造プロセスに問題が発生したとのシグナルとなり、不良率増加原因を早急に排除し再発防止、すなわち、処置と是正処置を実施しなければなりません。この問題を見過ごしたり、対策を取らなければ、忽ち製造原価は高くなり、利益計画が未達で終わることになります。


Q.年間を通じて管理指標が維持できれば運用管理されているということですか

A.まずは、足腰がしっかりとして来たことになります。しかしプロセスをさらに強化し、さらに高い品質目標に挑戦できるようにするためにはプロセスの継続的改善により高い管理指標の設定が期待されます。


Q.支援プロセスにも管理指標は必要ですか

A.ぜひ設定して下さい。プロセスとして設定したからには管理指標を明確にし、運用管理することが支援プロセスの強化に繋がります。支援プロセスとしては、教育・訓練、内部監査等がよく設定されますが、各プロセスの要員の力量維持・向上は、各プロセスの能力に影響しますから教育・訓練プロセスの管理指標として「力量」を監視する運用管理が考えられます。其の他、ヒューマンエラーによる工程トラブル件数、新製品立上げあるいは新設備導入時の早期工程安定化を目的とした要員教育計画の要素も管理指標として教育・訓練プロセスの能力を評価出来ます。